自己研鑽とは?自己研鑽の意味と読み方や使い方、自己研鑽と自己研鑚の違いについて、分かりやすくかつ詳しく解説します。
『自己研鑽』とは
「自己研鑽(じこけんさん)」とは、自分自身のスキルや能力などを鍛えて磨きをかけること。学問や研究を深く究めることです。
また、自己を向上させようとする、自分磨き、自己啓発の意味に近い使われ方もします。
『自己研鑽』の読み方
「自己研鑽」の読み方は、「じこけんさん」と読みます。
パソコンやスマホで、「けんさん」と打ち込んで変換してみると、「研鑽」としっかり変換されます。難しい漢字ですが、自己研鑽の読み方と一緒に意味も覚えておきたいですね。
『自己研鑽』の意味
「自己研鑽」の意味は、自分自身のスキルや能力などを鍛えて磨きをかけること。学問や研究を深く究めることです。
「自己研鑽」の漢字一つ一つの意味を知ると、より分かりやすくなります。
「自己」「研」「鑽」それぞれの意味
「自己」は、私、自分自身という意味です。
「研」は、1.みがく、とぐ。 2.物の道理を調べる。きわめる。の意味があります。
「鑽」は、1.(穴を開ける)きり。 2.物事を深く究める。といった意味があります。
研には、みがく、きわめる。といった意味合いがあるので、「スキルや技術に磨きをかける、自分自身を鍛えて能力を向上させる」といったときに自己研鑽という言葉が使えます。
鑽には、物事を深く究める。といった意味合いがあるので、「自分が疑問に思ったことについて深く勉強する、大学である分野において専門の研究をする」という場合に自己研鑽という言葉が使えます。
「自己研鑽」の意味
- 自分自身のスキルや能力などを鍛えて磨きをかけること。
- 学問や研究を深く究めること。
『自己研鑽』の使い方
「自己研鑽」の意味が分かったところで覚えておきたいのが、「自己研鑽」の使い方です。
「自己研鑽」の使い方は、自分自身に磨きをかける、自分磨き全般の事で、「自己研鑽」という熟語が使えます。
また、「自己研鑽」には深く究めるという意味があるので、何か物事について深く追求する・研究する・究める、というときに「自己研鑽」が使えます。
実際に「自己研鑽」が使われている例文を見ると、「自己研鑽」の使い方がもっとわかりますよ。
『自己研鑽』の具体例と例文
「自己研鑽」の使い方がイメージしやすいように、「自己研鑽」の具体例・例文をいくつか挙げてみます。
- キャリアアップ・スキルアップを図るために、日頃から「自己研鑽」を怠らない。
- 資格取得のために、土日の休日は「自己研鑽」に努める。
- 英語が話せるようになるために、英会話の「自己研鑽」に励む。
- 外国の人々や文化とのふれあいから、知識や見識を広め、「自己研鑽」を深める。
- 仕事を通じて自己実現するために、日々「自己研鑽」を積む。
- 高度な医療を提供するために、専門性の追究と日々の「自己研鑽」を重ねることで、個々が連携したチーム医療を実現する。
具体例・例文からわかるように、自分自身の能力やスキルを磨くという文章を書きたい場面で「自己研鑽」が使えます。また、勉強や研究などを究める、物事を深く追求する文章を書きたい場面で「自己研鑽」が使えます。
「自己研鑽」の具体例・例文から「自己研鑽」の使い方が分かったら、次に知ってもらいたいのが、「自己研鑽」には「自己研鑽」と「自己研鑚」の2種類の字体が存在するということです。
あなたは、「自己研鑽」と「自己研鑚」の違いがわかりますか?
『自己研鑽』と『自己研鑚』の違い、どちらの字体が一般的に使われているか?
「自己研鑽」の「鑽」という漢字ですが、「自己研鑽」と「自己研鑚」の二つの表記があります。
「自己研鑽」と「自己研鑚」の違いは、漢字の字体だけで、読み方も意味もまったく同じです。
「研鑽」の「鑽」の字は、かねへんに、旁(つくり)が「先先」「貝」であるのに対して、「研鑚」の「鑚」の字は、旁(つくり)が「夫夫」「貝」と書きます。
「研鑽」・「研鑚」の意味は、「(学問などを)みがき深めること」です。
意味はまったく一緒なのに、なぜ、「研鑽」「研鑚」の二種類の字体が存在するのかというと、第2次世界大戦後、1946年に国語改革の一環として定められた、「当用漢字表」、1949年に定められた「当用漢字字体表」の影響です。
当用漢字は、一般の社会生活における漢字の使用を制限する目的で定められたもので、GHQ(国軍最高司令官総司令部)の占領政策となった国語改革のもと、字体の簡素化も、一部の文字で行われ、1946年に「当用漢字表」、1949年に「当用漢字字体表」が制定されました。
しかし、日本の国民は単純には政府の政策に従いませんでした。当用漢字で決められたものは、当用漢字の字体を使いましたが、当用漢字に含まれない漢字は以前と同じ字体を使いました。
次第に漢字を制限することに反発する声も多くなり、その後、1981年に、「常用漢字表」が定められ、当用漢字は廃止され、常用漢字が使われるようになりました。
戦前に使われていた漢字が旧字体で、戦後から現在、私達が使っている漢字が新字体です。
こういった漢字の歴史の背景により、戦後の当用漢字の制定によって漢字の字体が簡略化され、贊成→賛成、讚美歌→賛美歌と簡略化されるようになりました。
「贊」→「賛」になり、「先先」→「夫夫」を使うようになりました。
これに伴い、サンの字も「先先」→「夫夫」になり、「鑽」→「鑚」という表記ができました。
「研鑽」と「研鑚」の二つの字体がある理由は、当用漢字の制定によって文字が簡略化されることで二種類の字体ができ、現在でも二つの字体が使われているからです。
コメントよりご指摘いただきました。
「当用漢字の制定によって文字が簡略化されることで二種類の字体ができ」という部分は、残念ながら誤りだと思われます。「鑚」は『開成石経』にも用例がある古い字で、唐の時代以前から使われています。当用漢字によって、いきなり現れたわけではありません。よければ『拓本文字データベース』の http://coe21.zinbun.kyoto-u.ac.jp/djvuchar?945A で、清の時代以前の用例をごらん下さい。
「鑚」の漢字は、『開成石経』にも用例がある古い字で、唐の時代以前から使われているそうです。
「当用漢字の制定によって文字が簡略化されることで二種類の字体(鑽・鑚)ができ」をはじめとした上記の一連の文章は、私の間違いでしたので訂正します。
そもそも、当用漢字の使用についての認識から間違っていました。
当用漢字の使用の注意事項として、「この表の漢字で書きあらわせないことばは、別のことばにかえるか、または、かな書きにする。」とあります。
当用漢字が制定されていた当時は、「自己研さん」のように、かな書きで書くことが望ましいとされていたようです。
今、私たちが使っている常用漢字が制定されてからは、「自己研鑽」・「自己研鑚」どちらの字体を使ってもよいとされています。
以上をまとめると、
- 「自己研鑽」と「自己研鑚」の違いは、漢字の字体だけで、読み方も意味もまったく同じ。
- 「自己研鑽」・「自己研鑚」どちらの字体を使ってもよい。
- 「研鑽」・「研鑚」の意味は、「(学問などを)みがき深めること。」
になります。
『研鑽』と『研鑚』、どちらの字体が一般的に使われているか?
一般社会では標準的に、「研鑽」と「研鑚」、いったいどちらの表記を使えばいいのでしょうか?
現代日本語を書き表す目安として、常用漢字表の字体で書くことが勧められています。
しかし、サンは、常用漢字外の漢字にあたるため、どちらの字体で書くか難しく、迷う方も多いと思います。
辞書で調べると「研鑽」でしか載っていなかったり、もう一つの「研鑚」が載っている辞書もあります。
基本的に、どっちの書き方をしても間違いということはありません。
「研鑽」・「研鑚」どちらの字体を使ってもよいとされています。
「研鑽」・「研鑚」どちらの字体を使えばいいかの目安は、正字と異体字を知ることで分かります。
正字とは、公式の場で用いられてきた標準的な字体、音読み(訓読み)も意味も同じなのに、字体だけが違う漢字が複数ある中でも、標準的な字体だと考えられるものを「正字」と言います。現代の日本では、常用漢字に含まれるものは、常用漢字表の字体で、それ以外の漢字については、『康熙字典』(こうきじてん)に基づいた字体を正字とすることが一般的です。
*『康熙字典』とは、1716年、清の第四代皇帝、康熙帝(こうきてい)の命令によって完成された漢字の辞典。漢代の『説文解字』以降の歴代の字書の集大成として編纂されたものです。
どれが標準的で、どれが正字かという判断は、時代や考え方、時の政府の方針で変わることがあるものです。
異体字とは、音読み(訓読み)も意味も同じなのに、字体だけが違う漢字が複数ある中でも、標準的な「正字」に対して、標準的な字体以外の字体を「異体字」と言います。
例えば「島」「嶋」「嶌」は、いずれも音読みで「トウ」で、意味は「シマ」で、正字の「島」に対して、残りの「嶋」「嶌」は、異体字になります。他には、「涙」に対する「泪」、「峰」に対する「峯」などがあります。
「研鑽」と「研鑚」の「サン」の場合は、「鑽」が正字で、「鑚」が異体字です。
「研鑽」と「研鑚」、どちらの字体が一般的に使われているか?
Google検索で検索ボリュームを調べてみると、「研鑽」266万件、「研鑚」29万6千件で、「研鑽」のほうが多いことが分かります。
「研鑽」と「研鑚」、どちらの字体を使ったらいいか迷っている方は、正字である「先先」「貝」の「研鑽」の字体を使ってみてはどうでしょうか。
『自己研鑽』を漢字で書くときの注意点
「自己研鑽」の「鑽」の文字を書くときの注意点ですが、「鑽」は、かねへん「金」に、旁(つくり)「先先」「貝」と書きます。「先先」の左の先のハネが、レのような字体で書くことが望ましいです。
以上、自己研鑽を書くときの注意点です。
『自己研鑽』の同義語・類語
「自己研鑽」の同義語・類語を知っておくと、同じ文章内で「自己研鑽」を何度も使うことを避けることができます。自己研鑽の同義語・類語を見やすいように表にまとめました。
意義素 | 類語 |
自分の能力や考え方を より良いものにすること |
自己啓発・自己研鑽・自己変革・自己革新・自己改革・自己改善・自分磨き 人間力を磨く・自己実現・自己の形成・自己発展・自分を高める・自己陶冶 ランクアップ・レベルアップ |
自ら進んで修練を積むさま | 自己研鑽 ・ 自己成長 ・ 自己練磨 ・ 克己 ・ 自分を鍛える |
『自己研鑽』の英語・英訳・例文
「自己研鑽(じこけんさん)」は、英語で [名] self-improvementです。
self [名] の意味は、自己、自分自身です。
Improvement [名] の意味は、
- 改良、改善、上達、向上、(前と比べて)良くなること、良いものになること
- 改善点、改修(工事)、変更箇所
といった意味です。
『自己研鑽』の英語の例文
私は英語を学ぶために「自己研鑽」したい。
I want to improve myself in order to learn English.
それは「自己研鑽」の証である。
That’s proof of my self-improvement.
私は今後とも「自己研鑽」に努めます。
I will continue to make great efforts with self-study in the future.
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コメント
「当用漢字の制定によって文字が簡略化されることで二種類の字体ができ」という部分は、残念ながら誤りだと思われます。「鑚」は『開成石経』にも用例がある古い字で、唐の時代以前から使われています。当用漢字によって、いきなり現れたわけではありません。よければ『拓本文字データベース』の http://coe21.zinbun.kyoto-u.ac.jp/djvuchar?945A で、清の時代以前の用例をごらん下さい。
安岡孝一さん
コメントでのご指摘ありがとうございます。
間違った情報を発信してしまったこと反省しております。
そもそも、当用漢字の使用についての認識から間違っていました。
ブログで「自己啓発」の情報を発信していくうえで、「自己研鑽」の記事を書く必要がありました。
正直、はじめは「自己研鑽」をなんと読むかもわからない状態で、『康熙字典』や『説文解字』も、はじめて知る状態でした。
わからないことについて記事にするわけですから、ネットでよく調べたつもりでしたが、誤って認識してしまい、このようなことになりました。
この記事を書くのに、それなりの時間をかけて書きました。いい加減な気持ちで書いたわけではないということだけでも、ご理解いただけたらと思います。
また何か間違いがありましたら、コメントでご指摘いただけたらありがたいです。